我が国の商標法は(以下「本法」という。)中華民国19年(1930年)5月6日に制定・公布され、中華民国20年(1931年)1月1日に施行されて以来、14回の改正が行われた。その間、国際基準に照らし合わせるために、商品・役務の分類が縮減された。本来商品商標および役務標章に分けて百以上にのぼった分類がニース協定に規定された45分類に統合され、また、連合商標と防護商標制度などが廃止された。しかし、商慣習が変わりつつあり、消費者の意識も大幅に向上する中、本法は、社会の期待に応え、法律が適用されない紛争を避けるべきである。そのため、本文には商標の管轄官庁である經濟部智慧財產局による近年の商標法または審査制度に関する重要公表情報が整理され、現行商標法に関する適用範囲を重点的に理解することにより、将来新法改正に関する対策を事前に検討しておける。
- 商標登録出願案件の加速審査:商標審査官陳冠勳氏の「過去10年の商標出願分析および産業発展趨勢(すうせい)」文章より、WIPO IP 2019(2018年のデータ)に基づいて各国と比較し、我が国の出願件数は109,000件以上であり、世界17位になる。また、智慧財產局が発表された109年(2020年)の商標出願統計表により、119,660件の登録出願(各分類で計算)があり、我が国の出願件数が徐々に増加していくことがわかった。審査員の人数が限られるので、案件量の蓄積や審査期間の遅延が発生しやすく、商標権の権利が不明確になる時期が長すぎる。案件審査の迅速化を図るため、既に「ファストトラック」(快軌機制)が導入され、本来6~8ヶ月の審査期間から3〜5ヶ月に大幅に短縮された。また、「加速審査」という規定が本法に新設され、「出願者が直ちに権利を取得する必要がある場合、事実と理由を述べ、加速審査の費用を納付した後、商標専属責任機関が加速審査を行うことができる」と明記した。ただし、商標専属責任機関である台湾經濟部智慧財產局は、出願者が参照・応用できる関連作業要点(手引き)を制定しなければならない。
- 公衆審査制度の強化と第三者意見書制度の実施:本来、使用者の未登録商標は他人が先に商標登録出願された場合、他人の商標が登録・公告後のみ、該当商標に対する異議申立・登録の取り消しを請求できる。ただし、行政審査が数ヶ月もかかり、しかも審査期間を故意的に数年間をのばす悪意の出願人もこともある。それ故に、商標案件の審査品質を高めるため、台湾經濟部智慧財產局は、108年(2019年)6月20日に「商標登録出願における第三者からの意見書作業要点」を制定・公布した。特に「識別性を有していない、他人の先使用商標と同一または類似の商標、模倣を目的とした出願、著名商標と同一または類似の商標、他人の著作権または特許権を侵害すること」など事由がある場合、商標出願段階から登録査定までに、上記の事由に関連する証拠を提出し、審査官が斟酌または審査する際の参考資料として、不足情報(例えば、著名商標の知名度、出願者の模倣または悪意の剽窃)を補うことができ、審査の正確性を向上する。ただし、提出した意見書の内容が不明確な場合、審査官は、補正あるいは採用の有無について積極的に通知を行わず、係争案件の進捗状況も通知しない。なお、係争案件が登録査定されたとしても、第三者より異議を申し立てることができるので、一事不再理という原則が適用されない。
- 商標代理人の管理:100年(2011年)7月1日付で「商標師」の関連規定が削除された。実務において、弁護士、会計士または行政書士など資格者でも商標案件を取り扱えるし、また商標代理人の制度はうまく機能しており、さらに国際的には「商標師」という制度も存在していないため、上記理由を踏まえて、「商標師」の関連規定は削除された。ただし、商標代理人の管理システムが制定されていないため、国内の商標代理業務を如何に管理するか、また国内商標代理の専門性を高め、品質の悪い業務代理及び代理市場の不当競争を如何に減らせる課題があった。今後の管理について、出願者は經濟部智慧財產局の商標代理人登録簿を通じて商標案件を代理人に委託できる。また、經濟部智慧財產局は商標法の強制的な登録制度を通じて、代理人を管理することができる。ただし、商標の代理業務は、弁護士またはその他の資格者や技術人員が実行できるので、弁護士法または関連法律で管理できるので、本法の管理対象に含まれていない。従い、業界より複数法律で適切に管理できないという懸念の声がある。特に、商標代理人の登録は強制的であり、違反者は商標専属責任機関にNT $ 30,000~NT $ 150,000元の罰金が科せられ、そして違反の回数によりさらに罰することができる。ただし、商標代理人の管理および代理サービス品質を維持することができるかどうか、現時点まだ確認できない。さらに、商標代理人を登録した後、毎年は一定な教育訓練課程を受ける必要があり、商標代理人にとって煩雑な作業になるか、あるいはただ形式上の管理になるか、今後関連管理方法の実行および調整次第、商標代理業務全般をさらに完備することを図る。
- 異議申立手続の廃止、複審・紛争審議制度導入:110年(2021年)1月7日の公表では、異議申立手続の廃止が言及された。出願の審査段階において既に審査の参考とするための第三者意見書制度を導入しており、異議事由の中、約97%の案件は商標の相対的不登録事由について争われている。手続を発動する主体について、現行の無効審判における「利害関係者」に限定する作用と高度に重複している。従い、異議申立を廃止し、紛争解決手続は、無効審判および取り消し(撤回)の二種類に統合する。無効審判に関して、行政院に提出した一部修正条文には、絶対的不登録事由という理由で無効審判を請求できる提起人は「何人」に緩和されたため、異議申立と比べて、高度に重複していることが分かった。また、異議申立の請求期限は3ヶ月のみであり、無効審判の請求期限5年と比べてかなり短いと言える。両制度の機能(役割)、請求期限の違いを考慮し、異議申立の必要性がなくなった。そのため、商標案件の事由により、複審手続および紛争解決手続に分けられる。簡単に説明すると、商標出願手続における商標専属責任機関の決定や処分に不服した場合、商標複審案件に属するが、無効審判や取り消し請求案件は商標紛争案件に属する。上記複審案件と紛争案件二者の手続はだいぶ異なり、例えば、商標複審案件は書面審査を採用するが、商標紛争案件は口頭審理を採用し、すなわち当事者進行主義である。具体的に、双方当事者は商標専属責任機関が所定した2回目の審理に欠席した場合、該当無効審判は撤回(取り下げ)とみなされる。また、一方の当事者が欠席した場合、商標専属責任機関が他方当事者のいずれか一方の申請とその口頭答弁内容に基づき、決定することができる。従い、現行法から大きく変動され、商標権者または申立人ともに重視すべきである。特に、商標代理人を委託する際に、商標代理者の専門性と案件管理の確実さを注目すべきであり、遅延による損害を回避する。
- 訴訟制度の変革:上記説明を踏まえて、紛争案件の訴訟、現行法では行政訴訟となり、商標専属責任機関の決定に不服した場合、訴願を提起することができる。また、訴願に不服した場合、訴願機関を被告として行政訴訟を提起できる。しかし、新改正条文では、無効審判、取り消し請求等紛争案件における当事者が商標機関の商標権の紛争に対する決定に不服した場合、相手方を被告とし、知的財産裁判所(智慧財產法院)にて訴訟を提起する。何故ならば、商標権は私的紛争であり、商標審査機関は中立的な第三者であるため、商標権に関する実質的な紛争に関わるものではない。商標専属責任機関が裁判所の判断に従って撤回または再審査を行った場合、不服がある他方当事者は訴訟で救済を受けることができるので、訴訟が繰り返して司法資源の無駄になり、紛争解決に役立てない。ここでもう1つ注意すべき点は、訴訟手続きは簡素化になるが、訴訟手続きのコストは高くなる。商標権者または他方当事者にとって、訴願という救済制度が減縮されたが、弁護士を委託して訴訟を行う必要があるので、出費がむしろかさむ可能性がある。おそらく当事者に積極的に自分の権利を保護させ、そのような紛争を減らすことに期待するだろう。
参考資料:經濟部智慧財產局公式サイト。
- 110/1/7:公告商標法部分條文修正草案
- 109/11/4:公告「商標法部分條文修正草案」行政院審查版本
- 109/3/20:商標註冊申請案「快軌機制」預定109年5月1日起開始試行實施,歡迎申請人多加運用!
- 108/9/27:「108年商標法修正部分條文修正草案」公聽會
- 108/6/20:訂定「商標註冊申請案第三人意見書作業要點」,並自即日生效