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【台湾商標法】2021年商標「誤認又は混同のおそれの審査基準」の修正の紹介(上)

2022-08-15


  商標法において、商標の抵触に関する規定には、大抵「誤認又は混同のおそれ」という要件が定められていますが、誤認又は混同のおそれの概念と商標法の適用及び認定の問題とを明らかにするため、経済部智慧財産局は、2004年に「誤認又は混同のおそれ」の審査基準を改めて制定し、それ以降、2012年に商標法の改正に連動する形で修正が行われてきました。今現在に至るまでに社会の変化があったことや、比較対象となる二つの商標が誤認又は混同のおそれを生ずるに至るか否かに関する事件の蓄積もあり、経済部智慧財産局は、審査の質と審査の一貫性を高め、商標の誤認又は混同のおそれの判断基準をより明確にし、その判断基準に従うことに資するべく、「誤認又は混同のおそれ」の審査基準を修正した上で、2021年10月27日にその運用が開始されました。今回の修正では、「誤認又は混同のおそれ」という審査基準の名称を「誤認又は混同のおそれの審査基準」(以下「審査基準」とします)に修正しただけでなく、商標の類似、商品/役務の類似の部分、他の誤認混同を判断する各要素、並びに商標法第30条第1項第10号但書の「明らかに不当である」等の認定の原則を新たな判断基準として加えました。本文は、現行の審査基準の重要規定について紹介します。
一、   商標の類似の部分:
(一)   識別性強弱と全体観察:
審査基準の八大要素において、「商標識別性の強弱」は元々誤認又は混同のおそれの参酌要素の一つでありましたが、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準は商標の類似の部分にどのように影響していたか、またどのように適用すればよかったのかについて、明確な説明がなかったことから、現行の審査基準は商標の要素を構成する識別性の強弱及び全体観察に関する判断基準を改めて追加しています。例えば、審査基準5.2.6.6の外国語の語頭部分が同一である場合について、もし外国語の語頭部分が同一であり、指定した商品/役務において当該外国語の識別性が弱い場合、又はそれが他の単語と接合して異なる意味を明らかに含む場合、比較の比重を下げる必要があります。
審査基準がこの点について挙げている事件の類型は「Bioneed」と「BIONEO」であるところ、両者の語頭「Bio」は外国語でよく見られる接頭語であり、かつ類似商品/役務が広く取引者に商標の一部であるとみなされる場合、両者の類似の程度は低いと認定するべきであると説明されています。また、審査基準5.2.6.12は、「柚見幸福」と「手護幸福」を例としているところ、両商標の同一である「幸福」の二字は、関連する商品又は役務において、多数の者が登録している商標の一部であり、その識別機能は比較的弱く、「柚見」及び「手護」という識別性の比較的高い文字とそれぞれ結合すると、その全体的な観念又は呼称も明らかに異なり、類似の程度は比較的低いと認定できます。しかし、例えば、「福味堂」と「福味小吃屋」(「堂」と「小吃屋」は、いずれも場所の名称であり、識別性を有しない文字です。)のように、両商標の同一部分が識別性を有しない文字を結合する場合や、例えば、「WISS」と「IWISS」のように、全体的な外観及び観念に対する影響が軽微である場合、類似の程度を高く認定することができます。
(二)   分解できる文字商標の全体的な比較態樣
商標が外字の文字列であり、そのうち一部の外国語と他人の商標が同一であるとき、その一部をいくつかの部分に分解、切断して比較できるか否かについて、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準の比較は説明していなかったことから、拒絶査定又は紛争事件が発生した時、当事者からは往々にして、この方式の審査は全体観察の原則に違反するのではないかという疑問の声が上がっていました。現行の審査基準は、どのような状況下において、文字を分解して比較するのかについて具体的に説明しています。例えば、審査基準5.2.6.9には「例えば、『Primrose(ケショウザクラ、欧州サクラソウ)』と『Rose(薔薇、ハマナス)』のように外字が全体的に既に独立した意味を有している場合、原則的に分解及び切断をし、比較して、類似と認定することはできない。例えば、『LINECAST』と『LINE』とのように、商標が関連する消費者が熟知するいくつかの単語によって構成されている場合、又は、例えば、『sogotaiwan』と『SOGO』のように、商標が構成する要部を全体観察する場合、関連する消費者にその商標中の識別に資する文字があるために混同を生ぜしめるとして、類似であると認定することができる。」と記載されており、外国語の商標の中に、もし二つの外字の単語の間に記号、図形があるか、又は外字の文字列が異なる字体又は異なる大きさの字母を用いている場合、審查基準5.2.6.1.の「例えば、『coco,Bonnie』と『COCO』、『A★Bones』と『A-Bone』、『ariCASE』と『ARI』のように、外字の単語が句読点、特殊記号、図形記号などを使用する場合、または通常の書き方と異なる大文字、小文字の組み合わせを使用することで、外字の単語を外観上区別することができる場合、原則として区分けされた単語を全体的に観察し、商標の要部に注目して比較観察を行い、もし消費者が関心を持つ、または事後に印象を残す要部が近ければ近いほど、類似の程度をより高く認定する。」という規定に基づいて判断します。分解されて比較されるもう一つの場合は、文字を分解する状況とは多少異なり、商標の一部を他人の商標の全部又は他人の商標の主な識別部分に分けることができる場合です。この様な場合は、他人の商標の模様又は他人の商標の要部以外に、全体的な模様に他の図形又は文字が含まれていても、消費者が両商標の使用者間に関係企業、使用許諾の関係、フランチャイズ契約の関係又は他の類似関係が存在すると誤認する可能性があるため、経済部智慧財産局に類似の程度が高いと認定されてしまいます(審查基準5.2.6.11参照)。
例えば、「」と「」、「」と「」、「」と「」及び「」は、「」、「」「」が、それぞれ他人の商標の全部又は要部を含んでいるため、消費者に誤認又は混同のおそれを生ぜしめるおそれがあり、類似の程度が高い商標に属します。
(三)   特定の対応する単語とピンインの中国語と外国語の類似
数年前、実務において、外字「corhea」と「クロコダイル」の閩南語の呼称は互いに彷彿とさせるものであるため、両商標は誤認又は混同のおそれが生じると認定されました(最高行政法院91年度判字第619号判決参照)。
もし、商標文字の呼称が文字自体の呼称に準じておらず、第三の言語の呼称の間接的な連想を通じて、類似の発音が似ているとしているということを考慮すれば、このような判断は一般民衆の直接的な考えと隔たりがあることを避けられないため、現行の審査基準は、商標の呼称の類似判断につき、商標自身の文字の呼称は基準として判断さえるべきであり、中国語の文字の呼称は我が国の一般民衆の通常の習慣の発音に基づいて判断されるべきであり、外国語の呼称は外国の発音の規則を判断の根拠として参照するべきであると改めて規定しています。したがって、外国語のみを有する商標と中国語と外国語とを同時に有する商標において、二者が類似を構成するか否かについて、審査基準は、原則的に、二者の外国語の部分のみを比較するということを明示している。したがって、中国語と外国語との間において、もし二つの文字がそれぞれ翻訳した後、初めて、その呼称が相互に関連性があることを示す場合、原則的に呼称の類似を構成しません(審査基準5.2.6.4参照)。例えば、中国語の「酷魚(クロコダイル)」と外国語の「corhea」について、関連する需要者の「酷魚」に対する普通の発音は「ㄎㄨˋㄩˊ(kùyú)」であり、台湾語で「corhea」と翻訳したり、「kɔrhi」と読むのではなく、このとき上述の審査基準の説明に基づくと、中国語の「酷魚」と外国語の「corhea」の二者は類似を構成しないはずです。外国語のみを有する商標と中国語及び外国語を同時に有する商標につき二者間で類似を構成するかについて、審査基準は原則として両者の外国語の部分のみを比較することを明示しています。ただし、もし、中国語と外国語が相互に対応するピンインであり、かつ全体的な呼称が互いに彷彿とさせる場合や、又は社会通念に基づき既に特定の対応する単語を有しており、容易に関連する消費者に連想させる場合、全体の呼称は類似を構成する可能性があります。例えば、「Fuji」と「富士」については、外国語の「Fuji」は、特定の中国語訳「富士」との関連性を生じさせるものであるから、二者は依然として類似を構成します。
(四)   その他
同一類似の商標の判断については、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準が例示する説明は「日日安」と「月月安」であるところ、この類型は消費者に同一の企業の商品であると誤認される可能性があります。