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【台湾商標法】商標「不専有の申し立てをした」部分の「誤認混同」の比較をした時の地位

2022-09-15 商標課 王竹平


一、前書き
  前回の「不専有の申し立て制度の紹介」の一文において、不専有の申し立て制度の仕組み及びその効果について説明しましたが、不専有の申し立てをした部分の商標紛争事件における地位及び実務上の見解はどのようなものであるのか、本文にて二篇の判決を用いて解説します。
二、裁判所判決
一、最高裁判所109年度台上字第1758号民事判決
  本事件は、「台北金融大樓股份有限公司」(被上告人)が登録された「」と「」の商標(係争商標)に基づき「数字科技股份有限公司」(上告人)に対して「」の商標を使用する行為について、商標権の侵害を主張したものである。
登録番号:00165568 登録番号:00165569
登録日 :  091/07/01 登録日 :  091/07/01
不専有の申し立て:模様における[台北]及び[101]はそれぞれ専有の範囲内にない。 不専有の申し立て:模様における[TAIPEI]及び[101]はそれぞれ専有の範囲内にない。
(係争商標に関する情報)
判決要約:
(一)
登録査定及び登録広告がされた商標について、識別性を有しないため不専有を申し立てた部分を含んでいるが、商標権者は指定商品又は役務において全体商標を使用する権利を依然として取得しているが、当該商標における不専有の申し立てていない特定部分を単独で使用する権利ではない。
(二)
商標の誤認混同のおそれの判断は消費者の角度で消費者の角度で観察するべきところ、商品又は役務が消費者に示す商標はその全体の模様を以て表されるのであって、分解した後の各部分を以て表されるのではない。よって、商標間おける誤認混同のおそれの有無及び類似であるか否かの判断は、商標の模様について全体的に観察しなくてはならず、その識別性を有しない部分は商標の類似であるかの判断に依然として影響する可能性を有しており、特に、当該専有しない申し立てをした部分について、商標権者が市場において実際に使用して変化が既に生じており、商標権の取得後に後天的に識別性を取得した場合、不登録の事由とはならならず(同条第2項規定を参照)、既に著名商標の顕著な部分を形成しており、商標の模様につき全体観察を基準として類否を判断するときのように、当該顕著性を有する主たる部分を合わせて斟酌することができないとするものではなく、商標権者は別途この商標登録出願をする必要はない。
(三)
原裁判は被上告人は係争商標権者であることを判定しており、当該商標は数字「101」と中国語英語の「台北」、「TAIPEI」又は101の建築体の図形が組み合わされて成り、著名商標が形成されているところ、そのうち101」は消費者がより熟知している象徴であって、係争商標の顕著な部分に属しており、全体観察をすると、上告人が使用するイ号商標の後部の中国語「名品會」は名品が集まることを意味するものに過ぎないことから、先頭が太字でデザインされた数字「101」という目を引く部分を消費者が商品又は役務の出所と識別する主要な部分であるとするべきであり、これは係争商標の「101」の部分は完全に同一であって、書体に僅かな相違があるだけであり、全体的な外観、観念はいずれも互いに彷彿とさせるものであるため、被上告人は不専有の申し立てをした「101」の部分について単独で商標権を主張することはできないが、「101」は係争商標の顕著な部分になっており、商標全体の模様に基づき比較すると、イ号商標と係争商標とは類似を構成すると判断することができる。
二、知的財産及商業裁判所110年度行商訴字第27号行政判決
  本事件の原告は「」の商標(係争商標)につき、第35類の宗教用品の小売卸売等の役務を指定役務として、商標登録出願をしており、当該商標は経済部知的財産局(被告)により登録査定となっており、登録第1930281号商標として登録されていた。その後、登録異議申立人により、当該商標と係争登録第01359638号「」の商標とは類似を構成し、また、同一又は類似の商品/役務を指定して使用することは、誤認混同のおそれを生じさせるおそれがある等の理由で、原告の登録商標対して異議を申してがされたところ、経済部知的財産局(被告)により係争商標の一部の役務の登録は取り消されるべきである旨の処分がされた。原告は訴願(経済部知的財産局の管轄省庁である経済部に対する行政不服申立て)を提起したが、請求却下となったため、知的財産及び商業裁判所に行政訴訟を提起していた。
登録番号:01359638
登録日 :  098/05/01
不専有の申し立て:商標模様における「府城吳萬春香行 Since 1902」は専有の範囲内にない。
 
(係争商標に関する情報)
判決要約:
(一)
係争商標と取消理由となった商標との同一類似:
いわゆる外観の類似とは、商標又は標章の模様の構図、排列、書体又は色使い等の項目において類似性を有しており、誤認混同のおそれを生ずることを指す。係争商標由を審理したところ、字体が比較的黒く大きめの書法である中国語字「吳萬春」、左側に字体が小さめの中国語字「香鋪」、右上に字体が小さめの中国語「吳萬春」の音訳である外国語「WU WAN CHUN」、中国語「吳萬春」の印鑑等の項目を合わせて構成すると、全体的な模様は関連する消費者の認識できるものであって、かつ明確に表示された出所を示して区別するために明確に表された特徴は「吳萬春」又は「吳萬春香鋪」と表示されている。取消理由となった商標はデザインされた模様及び中国語の「台灣漢香」により構成されており、「府城吳萬春香行 Since1902」の部分についき商標権を主張しない旨申し立てている。両商標の模様を比較すると、取消理由となった商標は上述の部分について不専有の申し立てをしており、商標登録後に模様において不専有の申し立てをした部分を含んでいるが、商標権者は依然として指定商品又は役務において全体商標を使用する権利を取得しており、単独で商標にける特定部分を使用することができるのではなく、商標が関連する消費者に誤認混同のおそれを生じるか否かは依然として全体商標の模様を基準として観察して判断する(「不専有の申し立ての審査基準」2.2.2を参照されたい)。取消理由となった商標全体は、人に営業主体の出所が府城「吳萬春香行」であることを表彰していることを具体的で明確に表しており、これを全体の模様から分離して観察してはならない。両者「吳萬春」若しくは「吳萬春香鋪」又は「吳萬春香行」を比較すると、いずれも同一の業務範囲の「香鋪」又は「香行」を経営していることを示しており、同一の「吳萬春」を有していることから、類似を構成するべきであって、かつ類似の程度が低くない商標である。
(二)
吳萬春香行は取消理由となった商標の識別部分である:
原告は、取消理由となった商標の「府城吳萬春香行since1902」は字体が小さいだけでなく、かつ地点、商標名称及び創立年代を表示しているに過ぎず、記述的文字に属し、不専用の申し立てをしており、「台灣漢香」が主たる識別部分である云々。しかしながら、取消理由となった商標は、相当の識別性を有しており、かつ商号名称は商品に用いられ、通常当該商品と役務の提供は関連性を有しており、商品において通常異なる商標を別途表示しないところ、関連する消費者はこの形態において商号名称を商品の出所とすることから、識別性を有する。係争商標は106年12月29日に「吳萬春香行」又は「吳萬春」を商標又は商標の一部として「香品」等を同一又は類似の商品につき商標登録がされており、取消理由となった商標は多くの人が商標の一部として使用しておらず、登録となってる状況があり、取消理由となった商標の商号名称「吳萬春香行」は相当の商品の出所を識別する機能を有するとすべきである。
 三、解析
  上述の二件の事件において、敗訴した一方は、いずれも、商標権者が不専有の申し立てをした部分について商標権を主張することはできない、又は当該不専有の申し立てをした部分を以て両商標が類似を構成することはできないと主張していますが、裁判所は、主張する権利の商標における不専有の申し立てをした部分を根拠として二つの商標は類似を構成すると依然として認定しており、その検討の要点は、当該部分は商標権の範囲が及ぶものであるか否かにあるのではなく、両商標が消費者に誤認混同を生じさせるか否かにあります。したがって、商標権者は、商標権利の範圍と第三者が既に不専有の申し立てをした部分とが商標の誤認混同の判断に影響するかについて、二者は必ずしも関連性を有するとはいえないと主張することができます。たとえ、係争商標の部分と係争商標の不専有の申し立てをした部分が同一又は類似であっても、商標権者は単独で当該部分について権利を主張することができないと主張するだけでは、商標が取消されること、又は権利侵害の成立を回避することができず、第三者に誤認混同を生じさせる可能性があるか否かを依然として考慮しなくてはなりません。
  更に、前述の二つの判決は、その結果が同一でありますが、依然として相違点をも有します。「101名品會」の商標権侵害訴訟において、裁判所の認める「台北101」及び「TAIPEI 101」の商標は、商標権者が長年宣伝、マーケティングに使用した結果、著名商標となっており、かつ「101」における消費者が熟知しているものであるから、商標における顕著な部分となっています。よって、「101名品會」の商標は「101」と「台北101」及び「TAIPEI 101」の商標の顕著な部分「101」は完全に同一であり、二つの商標は、類似を構成し、第三者に誤認混同を生じさせるという結論に至ります。「吳萬春WU WAN CHUNデザイン図」の商標異議申し立て事件に至っては、裁判所も係争商業の模様において一部不専有の申し立てをしているが、関連する消費者に誤認混同のおそれを生じさせるか否かは依然として商標全体の模様を基準として観察するべきであると強調しています。したがって、係争商標の「吳萬春香行」は不専有の申し立てをしているが、依然として第三者に営業主体の出所の印象を与えており、両商標は、同一又は系列の商標であると連想させるものであって、第三者に誤認混同を生じさせる可能性がある、という見解は賛同に値します。
  しかし、「吳萬春WU WAN CHUNデザイン図」の商標異議事件の行政判決において、係争商標の「吳萬春香行」に対して識別性を有するか否かについて論述があり、「吳萬春香行」は識別性を有すると認定しており、その理由の一部は妥当性を欠くものであると考えております。当該事件の判決文第28頁の最後から7行目から、裁判所は係争商標は著名の程度に達してはいないと認定していることから、「吳萬春香行」は後天的に識別性を取得していないと推し測ることができ、判決文第25頁第3項目から裁判所は「商号名称は商品に用いられ、通常当該商品と役務の提供は関連性を有しており、商品において通常異なる商標を別途表示しないところ、関連する消費者はこの形態において商号名称を商品の出所とすることから、識別性を有する」を理由として、「吳萬春香行」は識別性を有すると考えています。商標法第29条第3項の規定に基づくと、商標の不専有の申し立てをした部分は商標の模様において識別性を有しない部分でなくてはならず、現行の実務及び審査基準の規定に基づくと、商号名称又は公司名称は営業主体の名称を表彰するのに用いられるものであって、商品又は役務の出所を識別するものとして用いられるのではないが、本事件において裁判所は、当該商号が商標として使用され消費者が熟知するものとなっていなくても、当該商号登記の関連情報のみを後天的に識別性を有した具体的証拠として、直ちに、商号名称が識別性を有すると認定しており、商標法第29条第3項の規定と商標の識別性に対する解釈と明らかに相違します。
四、結論
  商標の不専有の申し立てをした部分は商標権の範囲が及ぶものではありませんが、商標権者が商標の一部につき専有権を有するか否か、及び当該部分が誤認混同のおそれが生じるか否かの両者は絶対的な関連性を有しておらず、商標法の法目的は、商標権者の利益を保護する以外に、消費者の利益を保護すること、即ち、消費者に誤認混同が生じることを回避することにあります。もし、一商標と他人の商標における不専有の申し立てをした部分が同一又は類似である場合、第三者に誤認混同生じさせるとき、取消になる可能性があり、又は商標権を侵害していると認定されることがあります。商標登録出願又は商標を使用する場合に、出願又は使用しようとする商標の部分と登録された先願商標における不専有の申し立てをした部分とが類似することを発見したとき、依然として消費者が当該部分により誤認混同する場合があるか詳細に検討するべきであり、商標権者が当該部分に対して単独で権利を主張することができないことのみを以て、商標を出願又は使用しようとすることは不適法でないと考えることは妥当ではありません。