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【台湾商標法】2021年商標「誤認又は混同のおそれの審査基準」の修正の紹介(下)

2022-09-19

 
  • 商品/役務の類似部分:
    (一) 商品/役務の相互補完機能、共同又は組合せの使用の関係
      修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準は、商品/役務の類否判断において、「相互補完機能」を挙げていましたが、「例えば、万年筆、万年筆のインク及び万年筆の箱にように、機能間に相互補完の作用を有し、共同で消費者の特定の需要を満足させることができる。商品が機能において相互補完の関係が緊密であるほど、類似の程度はより高くなる」と簡単に説明するに留まっていました。現行の「審査基準」は「相互補完機能」の定義を加えました。この相互補完機能とは、「一つの商品がもう一方の商品の使用に不可欠であるか、又は重要性を有することであり、互いに密接な関係性を有し、消費者が同一の業者によりその商品が生産され又は販売されたものであると認識すること」ということを指しており(審査基準5.3.4.4)、これと同時に、審査基準5.3.4.5及び5.3.4.6は、「相互補完機能は、原則的に、商品の使用にのみ適用され、商品の生産過程には適用されず」かつ「機能的に相互補完関係を有する商品及び役務は、必ず同時に使用されることができ、かつ同一の消費者層に対するものである」と補足しています。もし、第18類「皮革」商品と第25類「被服」との二者の関係を例とすると、皮革を被服に製作したとき、即ち、皮革が被服商品の生産過程に使用されて、かつ皮革商品の販売対象が専門的なニーズを有する既製服の製造業者であるとき、衣服の販売対象は一般民衆であるところ、上記で掲げた審査基準の説明に基づくと、第18類の皮革商品と第25類被服商品とは相互補完機能を有しません。

      二つの商品が選択性又は利便性を理由として共同して又は組合せて使用するものである状況に至っては、現行の「審査基準」5.3.4.7は共同して又は組合せて使用するという概念と相互補完機能とは異なります。二者の相違点は、共同して又は組合せて使用する両商品間の関係は、不可欠なもの又は重要性を有するものでなく、消費者の習慣、嗜好又は利便性により二つの商品を同時に使用するものであるところ、二つの商品が相互補完機能を有することは二者の同時使用が不可欠であるか又は重要性を有するものである、という点にあることを明記しています。したがって、共同して又は組合せて使用する両商品の類否を判断するとき、生産者、マーケティングチャネル、需要者層等の要素を判断する参酌して判断するべきです(審査基準5.3.4.7参照)。
      例えば、
    1. 第9類の眼鏡商品と第14類宝玉商品は消費者の全体的なスタイルに組み合わせて使用するものでありますが、その商品性質及び主な用途は異なります。眼鏡の主な目的は視力の改善の用であるところ、宝玉を身に着けることは個人の装飾品としての用であることから、二者のマーケティングチャネルは異なるため、競争性を有さず、相互補完関係も有しません。
    2. 第25類の衣服と履物とは、いずれも人体の各部位を覆い保護して損傷から守り、かつ組合せて使用されることの多い流行ファッション商品であるところ、消費者が衣服を購入するとき、通常は同一の販売地で履物商品を見つけることができ、これらの商品は同一業者により製造される状況は頻繁にあることを鑑みると、類似関係を有すると認定することができます。
    (二) 商品自体とその部品、原料又は半製品との間の類似関係についての補足説明
      商品自体とその部品又は半製品の関係に関して、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準は「部品又は半製品の用途は商品自体の使用機能に対応するところ、若し、一つの商品がこの一部品又は半製品を欠くと、その経済上の使用目的を達成することができないか、又は著しく減損する場合、このとき商品自体とその部品又は半製品との間で類似を構成すると認定する可能性は比較的高い。」と規定しているに過ぎませんが、商品自体と部品等が類似関係を有しているか否かをより明確にするために、現行の「審査基準」は5.3.5.1において、「商品が複数の部品により構成されているか、又は一つの商品が原料又は半製品として別の商品を製造するのに用いられる等の事実がある場合、当然、類似関係を有するとは認定せず、個別の事件の具体的状況に基いて認定するべきである」と追加説明しています。例えば、商品自体と原料、半製品、部品の性質、用途、消費者層又はマーケティングチャネル等の因素を考慮しますが、商品自体がこれらの原料、半製品、部品により構成されることだけで、二者間に類似関係があると認定されません。また、現行の「審査基準」は、商品自体と原料等商品の性質、用途等の要素を考慮する以外に、二者の類否を判断するとき、二つの商品が相互補完関係又は必要な依存関係を有するかを参酌することもでき、若し、当該部品又は半製品が一般商品により同時に用いられるものであるとき、二者は原則的に類似しない、ということを別途明示しています(審査基準5.3.5.2)。
      また、原料、部品等と最終製品間との関係は、原料、部品を最終製品における形式に取付けたり、又は組合せたりするだけでなく、原料は最終製品を製作する過程において変動が発生するものであり、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準は、原料、半製品等と最終製品との類否判断に対して、両者間において最終製品が、当該部品を欠き、経済上の使用目的を達成することができないか、又は著しく減損するという要素のみを考慮していました。しかし、このような判断は、原料、部品等と最終製品が類似を構成する範囲を拡張するおそれがあるため、現行の「審査基準」は、原料又は半製品等と最終製品との間の「変動の程度」を含めて考慮すると同時に、原料又は半製品と最終製品の性質、用途、消費者層又はマーケティングチャネルが同一であるか、原料又は半製品と最終製品とが独立に販売され得るか否か等の状況を考慮して、類否の認定をすることとしています。
    1. 第18類の皮革商品は加工を経て第25類の皮鞋商品になるところ、原料─皮革─から最終製品─被服─になる変動の程度は大きく、一つは全体的に処理された動物の皮膚であり、一つは底部等を結合した靴であるところ、原料の外観又は特性はいずれも変動が発生しており、かつ二つの商品は性質、機能が異なる以外に、前者の皮革商品の消費対象は製造産業であり、被服は末端消費者により直接購入され、マーケティングチャネルと消費者層も異なるため、類似関係を有しません(審査基準5.3.5.4参照)。
    2. 第29類の鶏卵商品は調理を経て第30類のケーキ商品になるところ、両者はいずれも食品であり、かつ前者は後者の材料の一つであるが、変動の程度が大きいため、商品の性質、用途、生産者、マーケティングチャネル又は販売地等の要素を参酌すると、それぞれ異なるため、類似関係を有しません(審査基準5.3.5.5)。したがって、原料、部品又は半製品と最終製品との間において、依存関係若しくは相互補完関係、又は原料が最終製品になる変動の程度が小さいことが必要であり、かつ販売対象及びマーケティングチャネルが重畳している場合、官庁は原料、部品又は半製品と最終製品との間に類似関係があることを認定することができます。
    (三) 「マーケティングチャネル又は販売地」が類似する商品/役務の考慮要因の一つであることを追加
      「マーケティングチャネル又は販売地」に関して、以前から商標紛争事件において、当事者の一方は、両商品の販売地がいずれも量販店、スーパーマケット、又は百貨店であることを理由として、販売地が重畳していることから、商品が類似を構成することを主張することがありました。しかしながら、量販店、百貨店等の場所で販売された商品の様式、種類は非常に多く、これを商品が類似であるかの重要な参酌要素として、商品の類似範囲を拡大させることとなっていました。したがって、現行の「審査基準」は、「昨今、スーパーマーケット、薬局(ドラッグストア)、百貨店等の場所における、様々な商品が販売されていることから、この要素を過度に強調する必要はなく、……専門販売の形式の販売所において習慣的に同一の区域に置かれ同一の種類の商品を販売する場合に限り、類似する商品/役務であるとする認定に有利である。」(審査基準5.3.7)、ということを改めて説明しています。よって、この要素を判断するとき、商品の販売区域の配置と商品の機能とに基いて総合的に考慮します。例えば、第7類の家庭用電気式ジューサーと第11類の電気コーヒー沸かしとは、同一の家庭用電気機器部門で販売されていることが多いことから、類似する商品であると認定される可能性が比較的高いです。
    しかし、第21類の皿、コップ、ボウル及び第24類の敷布、布団カバー等商品は、百貨店の同一フロアに配置されて販売されることが多いが、商品の性質、又は用途が大きく相違しており、かつ生産元が異なる等の要素を参酌すると、非類似であると認定し得ます
  • 先願商標権者の同意を得る:
      商標法第30条第1項第10号但書の規定する「ただし、当該登録商標又は先に出願された商標の所有者の同意を得て出願し、かつ明らかに不当でないものは、この限りでない。」に関する状況において、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準は「明らかに不当」の状況に対して、二つの商標が記号又は大文字小文字等の相違点を有するに過ぎない状況において、結局のところ、同一又は類似に属するのか?商品/役務の名称の文字が異なるが、概念上同一の商品/役務に属するときは同一の商品/役務であるのか、解説されていませんでした。したがって、現行の「審査基準」では、例えば、「旺旺」と「旺-旺」、「BABY CARE」と「baby care」などの、商標が若し記号の有無又は大文字小文字文字の形式の形式的な僅かな相違しかない等の状況において、同一の商標であるとみなすべきであると考ています。商品/役務の部分において、例えば、「藥錠」と「藥丸」、「唇膏」と「口紅」又は「小吃店」と「小吃攤」等のように、文字は異なるが実質的に同一の概念に属する商品/役務についても同一の商品/役務であるとみなすべきであると考えています。この修正により、同一の商標及び商品/役務同一の概念がより明確になり、同意書を発行するときに受理されるか否かについて、出願人はより明確な判断が可能となりました(審査基準7.3)
  • 結論:
      現行の「審査基準」は、修正前の「誤認又は混同のおそれ」の審査基準と比較して、商標の類似の判断に関する多くの識別性の強弱に関する考慮要因や外字の文字列である商標が分解できるかの基準以外に、商品/役務の類似の部分について、多くの類似関係の判断要素を追加しました。「審査基準」について今回の大幅な修正がされましたが、公表が施行されてからまだ三ヶ月余りしか経っていないため、本基準が今後の商標事件に対する審査の基準の変化、実務でどのように実際に運用、適用するべきであるのか、商標の各種事件への影響に関する今後の発展に目を離さず観察していく必要があります。