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【台湾商標法】「知的財産及びビジネス裁判所111年度刑智上易字第18号刑事判決」を通じて、商標の指示性の合理的使用を理解する

2022-11-29 商標グループ 王竹平


一、知的財産及びビジネス裁判所111年度刑智上易字第18号刑事判決の概要
  登録第01703784号「歐姆龍」商標(以下、「オムロン」商標とする)は、原告であるオムロン株式会社より我が国の経済部知的財産局に医療分析機器、医療器具、医療機器等を指定商品として商標登録出願をして登録査定となされ、商標権を取得していたものである。当該登録商標は、現在も独占期間内にある。被告は、2020年9月から同年11月まで、コンピュータ関連機器を利用して、中国のタオバオワンの周知でない者からオムロンの代替シール(以下、係争商品とする)を輸入する共に、蝦皮オンラインストアで公開、陳列及び販売の行為を行っていた。原告代理人が台湾台北地方裁判所の民間公証人事務所のオフィスに赴き、公証人がコンピュータおよびインターネット機器を使用してインターネットに接続し、原告代理人が提供したウェブサイトのリンクを入力して蝦皮ショッピングウェブサイトにアクセスしたところ、店舗番号が「000000000000」であり、オークション商品名が「オムロンOmron代替シール」であるオークションページなどの情報が証拠として確認された。よって、上告人である台湾新北地方検察署検察官は、被告が商標法第97条後段に違反して、電子媒体又はインターネットの方式を通じて違法に販売し、販売を意図して所持、陳列及び輸入をした疑いがあると考え、簡易判決の処刑を求めていた。
  本事件の裁判所により審理された結果、裁判所は、最初に商標の合理的使用には、説明的な合理的使用及び指示的な合理的使用の2種類があることを説明した。いわゆる「説明的な合理的使用」は、第三者が他人の商標で自己の商品又は役務の名称、形状、品質、性質、特性、産地等を説明することを指し、この方式の使用は、他人の商標を利用して商品又は役務の出所を示す機能はなく、単に商品又は役務自体の説明をするためのものです。また、いわゆる「指示的な合理的使用」は、第三者が他人の商標を使用して、その他人(即ち、商標権者)又は当該他人の商品又は役務を指示することを指し、この方式の使用は、依然として他人の商標を利用して当該他人の商品又は役務の出所を示す機能を有するものであって、自己の商品又は役務の品質、性質、特性、用途等を表示するために用いられ、いずれの両者とも自己の商標の使用として扱われず、商標権の効力に拘束されない。本事件の関連する証拠及び以下に列記の理由に基づくと、被告の行為には商標権を侵害する故意があったとは認め難い。
  • (一)原告の登録商標と同一又は類似の商標を使用したか
  •   被告が蝦皮ショッピングサイトで陳列販売する争点商品の写真について、商品自体には「オムロン」または「OMRON」という商標が表示されていないが、係争商品の写真の近辺において、記述的文字で「オムロンOmron代替シール」と記載されており、被告は、原告の上記に掲げた登録商標と同一及び類似の字句を使用していることが確認された。
  • (二)  被告が使用する「オムロン」、「Omron」の文字がただ単純に商品を記載する用途で用いられたか
  • 被告は、「代替シール」の用語を使用しており、商品規格のブランドの欄には「自社ブランド」と記載しており、商品の詳細欄には、「通常版(17グラム)は、正規品より少し厚く、粘着力が高い。厚め版(22グラム)」等の内容が記載され、被告が販売するシール商品の形状と原告が販売するOMRONのOMRON低周波治療器製品に使用されているシールの形状とが一致することが立証され、被告が掲載した「オムロンOmron代替シール」のオークションページ、原告の製品の操作マニュアル、オフィシャル商品の写真から、「オムロン」、「Omron」の文字は、単純にその販売されたステッカーが、原告が販売するOMRON低周波治療器の製品と互換性があり、原告の純正品のシールと代替できることがわかる。
  • (三)係争商品が消費者に誤認混同を生じさせるか
  • 17.9元から20元であり、原告が販売する純正品シールの価格は、一枚あたり250元であるので、両者の価格差は12倍以上にもなり、関連する消費者は、被告が掲載した係争商品の文字による説明及び価格差により、被告が販売した代替シールは、原告が販売する低周波治療器の純正品シールを代替することができると判断できるが、これらの代替品は被告独自のブランドであるため、係争商品と原告人が販売する純正シールとの出所が同一又は関連企業、ライセンス契約、フランチャイズ又はその他の類似する関係があると誤認することはない。
  • (四)結論:
  •   被告の行為は、他人の商標を使用して、係争商品の出所を示すものではなく、原告の商標を使用して、原告の商品の出所を示すものであり、それによって、係争商品の用途が原告の純正品シールを代替できることを示しており、指示的な合理的使用に属し、「オムロン」、「OMRON」商標の商標権の効力は及ばない。そのため、被告が商標権を故意に侵害したとは認定できない。
ニ、「指示的な合理的使用」の紹介
  商標法第36条第1項第1号の規定によると、「商慣習に合致する信義誠実に則った方法により自己の氏名、名称又はその商品又は役務の名称、形状、品質、性質、特性、用途、産地又はその他商品又は役務自体の説明を表示するのであって、商標として使用しない場合」は、他人の商標権の効力に拘束されない、即ち、商標の合理的使用の規定である。当該号の規定によりわかるように、商標の合理的使用は、「説明的な合理的使用」及び「指示的な合理的使用」の2種の態様に分けられる。また、「説明的な合理的使用」又は「指示的な合理的使用」のどちらの場合でも、使用者の目的は、提供する商品/役務の品質、性質、内容、用途等の説明を消費者に知らせることに過ぎず、商品/役務の出所を表彰するためではなく(即ち、非商標的使用)、商標法第5条が規定する商標の使用行為は、マーケティングの目的であり、かつ当該標識の使用は、商品/役務の出所を表彰する機能を有する必要がある点、両者は異なる。
  「指示的な合理的使用」については、使用者が商標権者の商標を利用するのは、当該商標を利用して商標権者の商品/役務を説明することにより、使用者が自己の商品/役務の品質、性質、特性、用途等を表示するためであると理解できる。生活においてよく見える「指示的な合理的使用」の状況は、例えば、修理工場は、TOYOTAやベンツなどの自動車を修理することが提供できることを知らせるために看板などに商標を表示する場合がある。この行為は、修理工場の修理役務が商標権者であるTOYOTAやベンツから提供されたものであることを示すものではない。また、携帯電話業者は、自己の商標の携帯電話と他人の商品の機能とを比較して、他人の商標を広告チラシ上で使用する場合、他人の商標を自己の商品/役務の比較に用いているに過ぎない。また、上記案例のように、非純正品である付属製品の業者(即ち、案例における被告)は、自己の商品と商標権者(即ち、案例における「オムロン」商標の商標権者)との互換性を表示しており、説明箇所のには「『オムロン』代替シール」の文字が記載されているので、消費者は自信の商品の規格等が他人の商標の商品と合致することを知ることができる。
  他人の商標を使用する予定がある状況にあたって、このような使用が指示的な合理的使用に属し、商標権侵害のリスクがあるかわからない場合、以下の3つの判断要素[1]を参考にできます。
  • (一)  商慣習に合致する信義誠実に則った方法であるか:行為人が主観的に不正競争の目的又は他人の商標に寄生する目的がなく、かつ客観的に使用される証拠が誠実かつ信用できる方法に従う必要があり、不正確若しくは虚偽の表示、又は他者の商標の商業的評判に影響を与える意図や寄生を目的することがなく、公正な競争秩序に影響を与えるような状況がないこと
  • (二)  他人の商標を使用することが必要な行為である:行為人が自己の商品又は役務を示すために、他人の商標を使用する必要性があるか。例えば、自身の商品と他人の商標の商品規格とが一致することを説明する必要がある場合や、百貨店の周年祭で抽選会の景品が他人の商標の商品であって、他人の商標を使用しなければ、その商品/役務の用途又は特性等を説明することができない場合。但し、依然として工商業実務における誠実な慣行に従う使用に限る。
  • (三)  使用した結果、消費者に誤認混同を生じるおそれがない:他人の商標を使用する場合、商標権者によるスポンサー、保証等の関係を示唆していない必要があり、行為者の行為が、相手方と行為者の間の商品または役務の真正及び正確な関係を反映するのに十分であること。また、比較広告において、競合他社の商標を使用する場合、虚偽の内容ではならず、又は関連する消費者が商品若しくは役務のの出所又は品質の混同を生じさせ、相手を害し、公正な競争に反する行為をしてはならない。
  他人の商標を使用する行為が上述要件を満たす場合、商標権侵害を構成する確率は低い。
三、結論
  現代社会において、多くの企業は自社の商標権を非常に重視しているので、他人が自己の登録商標を使用していることを発見した場合、通常、自身の権益を保護するために措置を取ります。しかし、他人の商標をすれば、商標法第5条の商標的使用に属するのではなく、使用者が自己の商品/役務の品質、用途、特性等を説明するために、他人の商標を使用し、侵害を指摘されたとき、使用者は過度に慌てふためく必要はなく、まず自己による他人の商標の使用状況が商取引の習慣に従っており、かつ当該使用が説明のためだけに用いられており、商品/役務の出所を標章する用途で用いられていないことを満たすか確認する必要があります。もし、使用状況が商標権を侵害しているかどうかについて疑問がある場合は、弁護士又は商標代理人にアドバイスを求めることもできます。
 
[1] 民國110年版商標法逐条釋義,146頁。