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【台湾商標法】台湾と中国の商標法の制度についての分析と比較(上)

2023-02-02 商標グループ 張成祥


1、前書き
  商標権利のソースは、主に「登録主義」及び「使用主義」の2種類の取得方式に分けられる。現在、台湾と中国は、いずれも「登録主義」を商標権取得の主な方法として採用しており、商標登録出願人は、商標使用の事実がなくても主務官庁に登録出願をすることができ、先に登録すれば、先に商標権を取得でき、これに基づきさらに権利を行使することによって、他人の指定商品若しくはそれに類似する商品について登録商標と同一又は類似の商標を使用する商標権侵害行為を差し止めることができる。さらに、「使用主義」を採用して商標権を取得する代表的な国は、米国であり、その名の通り、商標の使用事実の有無が商標権取得の根拠となっており、現行の米国商標法に基づくと、いかなる個人、法人は使用している商標につき登録出願することができるだけではなく、使用意図に基づき登録出願をすることもできる。しかし、どのような状況であれ、その先行条件には相違がなく、商標の使用が商標権取得の前提要件である。しかし、実務上、「登録主義」又は「使用主義」の方式で商標権を取得することにも拘らず、2種類の方式には、互いに補完する面影が見え隠れしており、本文は、主に、先ず台湾と中国間の商標法制度の違いを紹介する。したがって、米国の商標法制度については、別途改めて紹介することとする。
  話を戻すと、台湾と中国の両岸間のいずれもは、現在「登録主義」を採用しているように見えるが、実際には、前述の通り「使用主義」の概念を取り入れている。即ち、商標登録後、正確な使用がなされていなかった等の原因がある場合、やっとのことで取得した商標登録が取り消される可能性がある。しかしながら、2つの異なる法制度の概念であるため、以下に、両岸の商標法の立法目的の視点から、どうして登録主義を基幹として、どのように「使用主義」によって補完しているのか、並びに、これを基礎としてどのような相違点があるのか簡単に要約して、検討する。
2、両岸の商標法の立法目的及び混合実行の概念
一、台湾及び中国の商標法の立法目的
  現行の中国商標法第1条は、「商標管理を強化し、商標専用権を保護し、生産者及び経営者に商品と役務の品質を保障させることを促し、商標の信用を維持し保護することにより、消費者と生産者及び経営者の利益を保障し、社会主義市場経済の発展を促進することを目的としてこの法律を制定する。」と規定しており、同法は、冒頭に主旨を非常に明確に示しており、1.商標管理を強化する、2.商標専用権を保護する、3.生産者及び経営者に商品と役務の品質を保障させることを促す、4.商標の信用を維持し保護する、5.消費者と生産者及び経営者の利益を保障する、6.社会主義市場経済の発展を促進する、以上6項目が中国商標法における最も重要な立法目的である。また、現行の台湾の商標法は、「商標権、証明標章権、団体標章権、団体商標権及び消費者の利益を保障し、市場の公平な競争を維持して、商工業の健全な発展を促進するために、本法を制定する。」と規定しており、1.各種商標権を保障する、2.消費者の利益を保障する、3.市場の公平な競争を維持する、4.商工業の健全な発展を促進するということが台湾商標法が制定された主な立法目的であることを明確に開示している。要するに、両岸の商標法は、今に至るまで何年にも渡る改正をしており、主に、商標権者を保障すると同時に、消費者の利益を鑑みて、消費者が商品又は役務を識別する標識として使用できるようにすることにより、商工業の正常な発展を促進することを目的としている。
二、「登録主義」及び「使用主義」を取り入れた概念
  上記において両岸の商標法の立法目的は、いずれも商標権を保障することを趣旨としているので、主に「登録主義」を採用している。それでは、どうして一定の程度で「使用主義」を取り入れることにより補助しているのであろうか。現行の中国商標法第49条第2号は、「登録商標は、その指定商品の通用名称となった、又は、正当な理由がなく3年間継続して使用していないとき、いかなる単位又は個人は商標局に登録商標の取消を請求することができる。」と規定しており、本条は、中国商標法の制度において「使用主義」を補助とする最大の影響がある条項である。また、現行の台湾商標法第63条第1項第2号は、「商標登録後、次の各号のいずれかの情況に該当する場合、商標主務官庁は、職権で又は請求によりその登録を取り消さなければならない:二、正当な事由なく使用せず、又は使用を停止し続けて、すでに3年が経過した場合。但し、使用許諾を受けた者が使用する場合はこの限りでない。」を規定している。即ち、これは、台湾商標法が「使用主義」を組み入れて、規範を明文化した重要条項である。台湾商標法と中国商標法の規定を見ると、両岸間において商標登録の後に商業行為が行われることを強制的に要求していないが、商標権を行使しようとする場合、自身より商標権の保護や他人より権利侵害に起因するものに問わず、商標登録を出願することだけで法律の保障により権利を完全に保護することができる。
3、「登録主義」又は「使用主義」を採用する影響
  両岸の法目的並びに「登録主義」及び「使用主義」をどのように条文に具体化したかを概説した後、さらに「登録主義」又は「使用主義」を採用することにより生じる影響を以下において説明する。
「登録主義」を採用した場合
  登録主義を採用すると、商標の公示制度を設けることにより商標の公信力を強化することができると同時に、不正の目的のある先取り的登録がされるリスクが潜在的にあるので、一般的に商標登録した者は、商標法の関連規定に照らして商標の使用を求められることがある。前述の通り、両岸の商標法は、商標登録後、一定期間内に商標を使用していなかった又はその使用をしなくなった場合に、商標登録が取り消される理由を構成するということ明確に規定している。問題の本質に迫ると、商標の主な機能は、自己と他人の出所の識別させることである。したがって、登録後に使用していない商標は、商標権者にとって実質的な効果がないだけでなく、消費者にとって商標によってブランドを認識することができない。即ち、登録事実に基づく商標権は、商業市場において実情から容易に切り離され、商標の機能発揮に不利なだけでなく、商標を無意味に取得して、関連リソースを浪費することに繋がるおそれがある。
「使用主義」を採用した場合
最も大きな問題は、企業が商標を採用する困難性及びコストが増加することである。それは、選択された商標が既に先に第三者に使用されたか正確に調査することは難しく、商標権を取得できたとしても権利状態が不安定になる可能性もあるからである。その原因としては、他人が善意の先使用制度を利用して後使用者の商標権に係る商標登録を取り消し可能性があり、権利紛争が発生した場合、商標権者が他人による先使用を証明することが困難であることが挙げられる。以上の原因により、商標権者は自身が完全な商標権を持っているかどうかを確信できなくなり、それによって関連するビジネス投資マーケティングの計画に影響を与え、大胆な決定をすることができなくなる可能性がある。
  上記のように、単一の「使用主義」と「登録主義」には欠点があるため、効率と公平を取り入れた運用方法が次第に発展しており、法の規範によって使用と登録の商標権における作用を兼ね備えている。具体的には、使用主義においては、商標の使用が商標権を取得するための根拠であることを固執しつつも、登録を通じて商標権の効力を強化している。一方、登録主義においては、登録出願が商標権を取得するための根拠であることに従う一方、未登録の商標に一定の保護を与えつつ、商標権者に商標の使用に関する義務を一定程度強化している。
4、結論
   法人または個人であれ、商標活動を行いながら、自身のブランドを立ち上げようとする場合、両岸の商標法の規範で、先にブランドの標章について商標登録出願することを提案する。関連規定に従い使用の事実を満たすことで、ブランド効果を最大化でき、更に、取得される商標権により法的保護を受けることができる。現在、商標登録を受けなければ商標を使用して商業マーケティング行為を行うことができないという強制規定は設けられていないが、両岸とも現在「登録主義」を主な権利取得の方式としているので、商標権を取得していないとき、他人の商標権を誤って侵害するおそれがある場合、または他人の模倣により商業的損失を被るおそれがある場合には、商標登録を受けることが最も好ましい対策である。