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【台湾商標法】2023年台湾商標法の一部条文改正草案の骨子

2023-03-27


  2023年3月9日台湾行政院会議は、「商標法の一部条文改正の草案」を通過させると共に、3月17日に立法院で審議(註1)を行うこととした。立法院の三読可決後、公布及び施行をすることができる。今回の商標法の一部条文の改正は、現行の商標制度に対して確実に大きな変動であり、今回の改正草案の一部改正骨子を以下に簡単に説明する。
  1. 異議手続の廃止
    現行の商標法は、商標が登録された後に、第三者が係る商標登録に登録できない事由があると考えた場合、異議又は評定手続きにより当該商標登録を取り消すことができるところ、異議及び評定は、同一の条文を主張することができるが、異議は商標登録後3ヶ月以内に申し立てなければならず、異議申立て人は、「何人」でもよい。評定の期間は、原則的に登録後5年以内に請求することができる。評定請求人は「利害関係人」に限されている。しかしながら、経済部知的財産局(台湾智慧財産局, TIPO)の統計に基づくと、現在、異議及び評定事件の主な事由は非常に重なっており、97%の異議事由は、商標が比較的登録できない状況で異議を申し立てされ、評定の請求を「利害関係人」に限って提起できるとした作用は非常に重複している。したがって、改正草案は異議制度を廃止し、「何人」も絶対登録できない事由を有する商標に対して評定を請求できるように緩和した。
  2. 「複審及び争議審議」の章を新設
    (1)
    「複審及び争議審議会」を設立した。改正草案は、商標管轄機関(即ち、経済部知的財産局)内に審議複審事件及び争議事件を担う「複審及び争議審議会」を設立する。また、商標の複審事件又は争議事件の専門的な判断の質を確保するために、事件は3名又は5名の審議人員により合議体方式によって審理される。そのうち、争議事件は、口頭審理で行われ、方式審査、審議手続における心証を適度に公開することや審議終結通知等の規定を別途規定した。
    (2)
    「複審及び争議審議会」が担当する審議の事件は二種類に分けられる。
    1. 複審事件とは、商標登録出願がされた拒絶査定に不服を申し立てる拒絶複審事件、及び商標登録出願及び商標権の移転手続きの処分に不服を申し立てる複審事件である。現行の商標法の制度から見れば、商標登録出願の拒絶査定及び権利移転手続の処分(例えば、不受理又は許可しない処分等)について、請求人は不服があれば経済部に訴願を提起するが、改正草案では当該部分の救済を「複審及び争議審議会」により審理するように改正している。
    2. 争議事件とは、評定及び取消事件を指しており、評定事件の事由は保護対象が主に社会公益又は特定人の私益に基づくものであり、「絶対登録できない事由」及び「相対的に登録できない事由」の二種類に分けられ、前者は商標法第29条第1項及び第30条第1項第1号乃至第8号の状況であり、何人も評定を請求でき、後者は商標法第30条第1項第9号乃至15号又は第65条第3項の状況であり、「利害関係人」に限り評定を請求できる。また、争議事件は、原則的に「口頭審理」を採用するが、例外的な状況で書面審理を採用することができ、現行の商標法での異議、評定及び取消事件はいずれも書面審理の方式を採用している点において異なる。また、争議事件の審議は民事訴訟法及びビジネス事件審理法の規定も参考にし、手続きの準備、適度な心証の公開及び審議終結通知等の方法を設けた。
  3. 「複審及び争議訴訟事件」の章を新設
    商標複審及び争議事件の審議決定に対して、改正草案は、これらの事件が訴願を経ることなく、知的財産裁判所に訴訟を提起することができる。改正草案は、この部分の規定と現行の商標法と比較的大きく異なる部分がある。現行の商標法の争議事件の救済手続は4つの救済層級であり、改正草案は争議事件に対して当事者は審議決定に不服を申し立てるように直接訴訟を提起できるので、訴願の手続きを減らすことができる。


    また、商標争議訴訟の部分に関して、改正草案は商標争議事件が私権争議の採決手続、即ち、複審及争議審議会は採決者の役割を演じて処分を行うに過ぎないので、争議の処分結果に対して不服を申し立てる場合、他方の当事者を被告として訴訟(即ち、「対審制」)を提起しているのに対して、現行の商標法で処分をした商標管轄機関を被告としていることで異なる。さらに、商標争議訴訟は、性質上民事訴訟と比較的近いので、商標争議訴訟は民事裁判所管轄に変更し、当事者は知的財産及びビジネス裁判所に民事訴訟を提起することとした。そして、商標複審訴訟は、複審訴訟と争議訴訟とが行政裁判所と民事裁判所の管轄に分属すると、救済制度を過度に複雑にし、一般公衆を困惑させる結果になるので、これを防ぐために、複審訴訟を民事裁判所管轄に割り当て、当事者は商標主務機関を被告として知的財産裁判所に複審訴訟を提起することとし、当該訴訟の性質は民事訴訟とした。改正草案は、複審及び争議訴訟を民事裁判所管轄に割り当てているので、訴訟の救済層級は民事事件と同様三級三審制であるのであろうかについて、この改正案においても商標複審訴訟及び争議訴訟は二級二審制であり、一審裁判所は知的財産裁判所管轄とし、二審を最高裁判所の法律審であると明確に定めた。
  4. 争議訴訟事件は弁護士による強制代理を採用
    当事者の利益を保障するとともに、商標争議訴訟事件が効率的に進行できるようにするために、改正草案においては商標複審訴訟及び争議訴訟の上訴も弁護士による強制代理を採用している。
  5. 商標登録出願人の権益を保障すべく、商標代理人の資格条件を充実完備させ、関連する管理施行法を新たに設けた
    商標法は、2011年に改正した時、商標代理人を商標師に限定する規定を削除したが、商標代理人の管理制度については規範していなかった。現行の商標法は商標代理人について台湾国内に住所を有していなければならない旨しか規定していないが、商標関連の規範は商標の形態、商品及び商品の商標争議事件に関わる高度な専門性を具備しているので、代理人は自ら商標に関連する法規及び実務運用に熟知している必要があるので、改正草案では商標代理人は商標主務機関が主催する商標専門能力認証試験の合格、又は一定期間に渡り商標審査の業務に従事していたことに加え、登録を申請し毎年在職訓練を完了して、商標代理業務を行えることを新たに設け、商標代理人資格及び管理施行法の規定により商標登録出願人又は商標権者の権益を保障することとした。
  今回の改正草案は、商標救済制度について大幅な変更があり、救済層級の簡素化以外に、更に対審制を導入し、従前のように当事者が行政処分に対して経済部知的財産局を相手方として不服を申し立てるのではなく、利害関係を有する対立の当事者が行政訴訟の攻防を直接に行えるようにすることによって、真実を発見し、訴訟を促進する機能を奏するということはいずれも台湾の商標制度に対する重要な改革である。現在、改正草案は三読可決していないが、弊所は、引き続き改正草案の進捗に注視しつつ、最新情報をリアルタイムに提供して参ります。
 
(註1) 立法院議事及び發言系システム「法律提案及び進度」で検索。(検索日期:2023年3月20日,https://lis.ly.gov.tw/lylgmeetc/lgmeetkm?.bfee00F7D9000001100000000000C00000310000000^37-16*^09e64fe5a9ce68f906188c666f6e74036c173733d662272265633e5b165dc2f666f6e4e373337676623aebb9200008000B0df95)