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【台湾商標法】商標登録に対する不使用取消審判における使用証拠の提出可能時期について

2023-11-29 商標グループ 王竹平


仮説ケース1:  
  甲社は、コンピュータープログラミングデザインサービスに指定使用され、登録日から3年が経過した「A商標」に係る商標権を有している。乙社は、商標法第63条第1項第2号に規定する3年間使用されていない事由により、A商標に係る商標登録につき取消審判を請求した。甲社は、経済部知的財産局(以下「知的局」とする)の取消審判の審理段階において使用証拠を提出しないことにした。甲社の商標登録は、取り消されるのであろうか?
分析:
  商標法第65条第2項には、「第63条第1項第2号に規定する場合、その答弁通知が送達されたとき、商標権者はその使用の事実を証明しなければならない。期間が終了しても答弁しなかった場合はその登録を直接取り消しすることができる。」と規定されている。乙社はA商標が「未使用」であると主張するのは、「消極的事実」であり、また「消極的事実」について、乙社に完全に立証責任を負うことを要求するのであれば、乙社より、甲社が実際にA商標を使用していないことを証明することは、困難となる。また、登録商標の使用事実の有無については、商標権者が最もよく把握しているため、法は、「商標権者は、登録商標が実際に使用されていることを証明できる十分な証拠資料を提出しなければならない。」ということを規定している。甲社がA商標の使用資料を提出しない場合、知的局は、甲社がA商標を実際に使用しているか否かについて、職権調査をする義務を負わず、商標登録を直ちに取り消すことができる。したがって、知的局の取消審判の審理段階において、甲社はA商標の使用証拠を提出しなかった場合、その商標登録は取り消される。
仮説ケース2: 
  上記のケースに引き続き、甲社が知的局からA商標に係る商標登録の取消処分を受けた後、訴願および行政訴訟を提起して、訴願および行政訴訟の段階において、A商標の使用証拠を提出した。これらの証拠によってA商標が確実に使用されていることを証明できる場合、これらの使用証拠は、訴願会および裁判所によって審理・参酌されるべきであろうか?原処分は、取り消されるのだろうか?
 分析:
商標法第65条第2項の規定からわかるように、商標権者が商標登録についての取消審判の手続きにおいて、使用証拠を提出しなかった場合、知的局が取り消し成立の処分を行うことが可能であるとすると、商標権者は商標登録に対して他人から取り消し請求を受け、知的局の審理段階において使用証拠を提出しなかった場合、訴願および行政訴訟において、商標の使用事実を証明する証拠を提出できないのであろうか?知的財産およびビジネス裁判所の2022年度行商訴字第20号行政判決の理由を参酌すると、商標法第65条第2項の規定は、商標権者が知的局から答弁期間につき通知を受け、答弁しなかった場合に、知的局が商標登録を直ちに取り消すことができることを規範しているにすぎず、商標権者が知的局から商標登録の取消処分を受けた後、訴願および行政訴訟を提起した場合、使用事実の証拠を提出することができないことを意味するものではない。また、商標法第63条第1項第2号の趣旨は、商標権者が登録後に登録商標を確実に使用していることを確保することにあるところ、商標権者が証拠を提出して、取消審判請求の前3年以内に真実の使用事実を証明できる場合、同号が規範しようとする対象に該当しないので、その商標登録を取り消すべきではない。商標権者が取消審判の段階において、答弁しなかったという理由だけで使用事実を証明する権利が失われるという効果が生じると、商標権者の当該権利を不当に剥奪し、公正な取引秩序に影響を与え、同号の趣旨に反することになる(最高行政法院2022年度上字第20号判決参照)。したがって、甲社が取消審判の段階において答弁せず、知的局が商標登録の取り消し処分をした後、甲社が訴願および行政訴訟の段階において証拠を提出することができ、裁判所は、これらの証拠を参考にしてA商標が実際に使用されたか否かを判断すべきである。証拠によってA商標についての実際の使用を証明できる場合、原処分は、取り消される。
結論 
  実務上、登録商標の3年間未使用による取消審判の事件において、たとえ知的局の審理段階で証拠を提出しなかったでも、訴願および行政訴訟の段階において、使用証拠を提出することができ、商標権者には、知財局段階において使用証拠を提出しなかったことが原因で、訴願および行政訴訟の段階において使用事実を証明する権利が失われるという等の不利益が生じることはない。ただし、商標法第65条は、商標権者に手続き上の利益を与えている以外に、商標権者に使用証拠の提出義務を課しているので、商標登録に対して他人から取消審判の請求を受けた場合、商標権者は登録商標を実際に使用している事実があるのであれば、知財局による商標登録の取消処分を避けるために、積極的に使用証拠を提出すべきである。特に、商標登録取消事件において、商標権者は最初の証拠提出可能期間に使用証拠を提出しなかった場合、ひいては知財局の段階で答弁を放棄し、訴願又は行政訴訟の段階で証拠を提出すると、往々にして証拠提出の時間を引き延ばして証拠を作る意図があると見なされることがある。したがって、商標権者は、常に登録商標の使用証拠を準備するだけでなく、商標登録に対して他人から取り消し請求を受けた場合、自らの商標の利益を保護するために、知的局によって指定された期間内にその使用証拠を提出するべきである。