一、「加速審査」とは何か？　　
　　2023年5月9日に立法院（国会の役割を担う台湾の最高立法機関は、「立法院」と呼ばれる）で三読通過した「商標法の一部条文改正案」により、加速審査制度が追加されました。この制度では、商標登録を出願する際、伝統的な文字や図形などの平面商標だけでなく、立体的なものや色彩、音声などの非伝統的な商標についても、出願人が即時に権利を取得する必要がある場合、事実と理由を明示し、加速審査料を納付した後、商標の所管官庁による加速審査が行われます。これにより、該当する商標は優先的に審査され、出願人は商標の審査結果を早く取得できます。この制度は「ファストトラック審査制度」とは異なり、電子出願を行い、商品や役務名が台湾の知財局の電子出願システムの参考名と完全に一致し、オンラインで料金を支払うという3つの要件を満たすだけで「ファストトラック案」として自動的に扱われ、通常の申請手続きよりも約2ヶ月早く審査通知を受け取ることができます。一方、「加速審査」は商標登録申請の外で加速審査申請を別途提出する必要があり、加速審査料を納付し、審査過程で補正が必要ない場合、2ヶ月以内に台湾の知財局から承認または不承認の事前通知を受け取ることができます。

二、加速審査を行うためには、次の条件を満たす必要があります：　　
　　一般商標申請が不公平に排除されることを防ぐため、商標法では加速審査に「即時に権利を取得する必要がある場合」を特に規定しています。該当する場合は次の通りです：

1. 商標申請の商品または役務がすべて実際に使用されているか、すべてが使用のためにかなりの準備がされている場合：
   (1.)

   所謂の「実際使用」とは、当該商標が国内で使用されていることを指し、その判断は商標法第5条の規定に準拠する必要があります。
   (2.)

   「既に使用の準備が相当程度進んでいる」とは、商標が市場での使用に近づいている状況を指し、出願人は具体的に準備されている特定の商品や役務、そして使用予定のマーケティング場所を明示する必要があります。例えば、商標が記載された商品や役務のサンプル、広告印刷物の注文、広告契約、ビジネスプランなどの証拠資料を提出し、商標が商業使用を行う準備が整っていることを証明する必要があります。
2. 出願人（または権利を委任された者）が指定された商品または役務の一部に商標を実際に使用しているか、または使用に関して相当程度の準備を行っている場合、および商業上で主張権利の必要性および緊急性がある場合：
   所謂の「商業上の必要性および緊急性」の状況は以下の通りです：
   (1.)

   第三者が同意なしに当該出願商標を使用しているか、または相当程度の使用準備を進行中である場合。
   (2.)

   当該出願商標の使用に関して、第三者から侵害警告を受けた場合
   (3.)

   第三者が当該出願商標の使用を要求している場合。
   (4.)

   当該出願商標が市場に投入され、販売または流通などの関連契約が協力会社と締結されている場合。
   (5.)

   当該出願商標が展示会に出展する計画があり、展示会の出展者と関連契約が締結されている場合。
   (6.)

   その他、商業上の必要性および緊急性を証明するのに十分な場合。
   
   上記の「即時に権利を取得する必要がある場合」に関して、出願人は事実と理由を明示し、具体的な証拠を添付する必要があります。提出された証拠は、出願された商標の図案と完全に一致し、指定された商品/名称と一致する必要があります。証拠は、商業文書や物品などであり、商標が示されている商品の実物、写真、包装、容器、看板の注文書、内装費用の領収書、契約書、出荷書類、輸出報告書、広告、カタログ、ポスター、パンフレットなどが含まれます。また、役務に関連する営業文書や営業場所の写真などもあります。これらに加えて、役務の収入証明書（領収書、請求書、見積書など）や広告証明書も提供する必要があります。

三、結論
　　現在、知財局は「商標登録出願案の加速審査手続き案」を公表し、商標法の改正施行日に合わせて発表を決定しています。加速審査は台湾の商標申請実務における新しい制度であり、加速審査申請書には即時に権利を取得する必要性の事実、理由、証拠を記載する必要があります。これらの要素は商標出願が加速審査の条件を満たしているかどうかに影響を与える可能性があります。そのため、商標戦略を展開する際や加速審査を活用する必要がある場合には、専門の代理人の支援を求めることをお勧めします。これにより、権利を速やかに保護することができます。